スピードサミー 

  いつものようにサミーはラブラブモンスターと戦っている。

魎皇鬼「今だサミー!!」

サミー「集まれ、正義の魔法。プリティー、コケティッシュ、ボンバーーーー!!」

自販機女「お札でジュースを買うときは、返却レバーで必ずおつりを確かめましょー!!」

 プリティコケティッシュボンバーで自販機女はお星さまとなった。

サミー「ふぅ……」

魎皇鬼「やったねサミー。これでまた一つ悪が消え去った」

サミー「そんなことより、もう1時45分だよ。2時までにCDを早く届けないと。」

ミサ「にょーーーほっほっほっほ……。さすがはサミー、あたしの自販機女を秒殺してく

   れちゃって……」

 今回はなぜか軽トラックの荷台の上で余裕ぶっこいてるミサ。

サミー「いいかげんにしてよミサっ!! サミーは急がなくちゃなんないだから!! な

    んで今日に限ってしつこいのよ!!」

ミサ「あら、サミーったら冷たいのね。あたしはただ、あなたのそばにいたいだけなのに

   ……。ミサちゃん悲しくなっちゃう……ウッウッウッ……」

サミー「ウソ泣きはいいから!! なんか用なの!!」

ミサ「あれ、バレちゃった?」

サミー「バレバレよ!!」

ミサ「まあいいわ。サミー、これなーんだと思う?」

 そう言ってミサが見せた物は、『ほのぼのサイコ』というCDだった。

サミー「あーっ!! なんであなたがそのCD持ってるのよ!!」

ミサ「にょほほん、あなたがバトルに夢中になってるときに、ちょっと失敬したの。返し

   て欲しい?」

サミー「あたり前でしょっ!! 返しなさいよ!!」

ミサ「もちろん……返すわけないでしょ、ぶぁーか」

 ミサが言い終わると、突然軽トラックが走りだした。

サミー「あっ、ちょっと待ちなさいよ!!」

ミサ「サミー、これをゲットしたければ、あたしに追いつくことね。にょーほっほっほっ

   ほ……」

 軽トラックはどんどん遠ざかってゆく。

 サミーには、軽トラックをただ見つめることしかできなかった。

 だが、ふと右脇に自転車があるのに気づいた。

サミー「ラッキー、これカギついてない」

 さっそくその自転車に乗ろうとするサミー。

魎皇鬼「だめだよサミー!! 正義の魔法少女が勝手に人の自転車に乗ったりしたら」

サミー「いいの、りょーちゃん。刑事ドラマとかで犯人に逃げられたら、民間人のバイク

    をよく借りるでしょ? それと一緒よ」

魎皇鬼「一緒なのかなぁ?」

サミー「一緒なの。それより行くよ、りょーちゃん!!」

 自分のやることを正当化しながら、すごいスピードで走りだしてゆく……。

スピードサミー 

2

あいかわらず軽トラックの上で余裕ぶっこいてるミサ。今度は正座してお茶を飲んで

いる。

ミサ「う〜ん、ドライブしながらのお茶って、やっぱり最高ねー」

 そう言うと、もう一口お茶を飲む。

サミー「待ちなさーい!! ミサぁぁぁ!!」

ミサ「あら、案外早かったのね」

サミー「それより、早くCDを返しなさい!! あなたに追いついたのよっ!!」

ミサ「まーまー、そんなにあわてないでサミー。……でも、このあたしがそんな簡単に…

   …どっこいしょ……返すと思ってっ!!」

 ミサは立ち上がるなり、魔法で攻撃してきた。

サミー「うわあっ!! いきなり攻撃なんて、卑怯よー!!」

魎皇鬼「かわすんだサミー!!」

サミー「だめっ、間に合わないーーー!!」

 ミサの魔法は見事にサミーの乗っていた自転車に命中。光に包まれるサミーと魎皇鬼。

サミー「うわぁーーー……ってあれ? なんともない……」

魎皇鬼「助かった……のか? !? サミー、ちょっとこれ見て!!」

サミー「な、なに? ……のわーーー!! 何これ!?」

 サミーが見たもの、それは……なんと乗っていた自転車がアヒルのデコチャリと化し

 ていたのだ。しかも、グリップから手錠みたいのが出てて、サミーの手首を固定して

 いるし、足の方もペダルに固定されている。

ミサ「どーお、気に入ってくれた? 名づけて、デニス・ホッパーアヒルちゃん号よ」

魎皇鬼「デニス・ホッパーアヒルちゃん号? すごい名前だな……」

サミー「名前なんてどうでもいいじゃない!! 何なのよ、これは!?」

ミサ「何って、デニス・ホッパーアヒルちゃん号よ」

サミー「だから、名前はどうでもいいのっ!!」

ミサ「あら、そうなの? じゃあ、この子の秘密を知りたいのかしら……」

サミー「秘密? 何なのよ、それは!?」

ミサ「あ、聞こえちゃったの? でもいいわ、特別に秘密を教えてあげる。まず、アヒル

   ちゃんの後頭部をルックしてちょーだい」

 ミサにそう言われて、アヒルの後頭部を見るサミーと魎皇鬼。そこには何かのメータ

 ーがはめ込まれていた。

サミー「何なの、これ?」

ミサ「スピードメーターよ。もっとも、命に関わるメーターだけど」

サミー「な、どういう意味よ、それは!?」

ミサ「簡単なことよ。この子は爆弾を積んでいて、そのメーターが時速15キロ以下にな

   ったら……ドカーーーンってなるのよ」

サミー「えーーーーーーっ!!」

魎皇鬼「えーーーーーーっ!!……ってパクリじゃないか」

 驚きながらもツッコミを入れる魎皇鬼。

ミサ「ま、そういうわけだから、くれぐれも時速15キロ以下にならない程度に、漕いで

   漕いで漕ぎまくってちょーだい。グッバイ、サミー」

 ミサがそう言うと、軽トラックはハザードをつけて左に寄ってゆく。

サミー「ちょ、ちょっと待ちなさいよ、ミサ!! 私のCDを返しなさいよ!!」

ミサ「安心してちょーだい、サミー。あたしが責任もって届けておくわ……たぶん。だか

   ら、何も心配しないでこの世にグッバイしてきてねー」

サミー「なに勝手なこと言ってるのよ!!あ、ちょっと、止まるなんて。まだ話の途中な

    のよ!! ちょっと、あ、ミサぁぁぁ!! ミサぁぁぁぁぁ!!」

 サミーの絶叫もむなしく、無情にもミサとの距離は広がってゆく……。

魎皇鬼「サ、サミー!! 前見て!!」

サミー「えっ? うわぁぁぁーーー!!」

 赤信号だが、もろに交差点へ突っ込んでゆくサミー。

 サミーの姿に気づくと、自動車はあわてて急ブレーキをかける。

 でも、そのおかげでサミーはなんとかひかれずにすんだ。

サミー「あ……あぶなかったね、りょーちゃん」

魎皇鬼「うん、死ぬかと思ったよ……。サミー、大通りは危険だよ。脇道に入ろう」

サミー「そうだね」

 サミーはそう言うと、大通りから脇道へ入っていった。

スピードサミー 

3

サミー「うわっ!! くっ!! ……ふぅ……」

 サミーは左から出てくる自転車と出会い頭にぶつかりそうになって、これをなんとか

 かわした。

サミー「りょーちゃん、今思ったんだけど、入り組んだ道を猛スピードの自転車で走るの

    って、ものすごく危ないんじゃない?」

魎皇鬼「そ……そうだったみたい……」

サミー「くっ!!」

 左から子供が飛び出してきたが、難なくかわした。しかし、今度は右から自転車が出

 てきた。

サミー「なんのっ!!」

 持ち前の運動神経で、デニス・ホッパーアヒルちゃん号をジャンプさせ、右から来る

 自転車を飛び越えた。だが、その着地地点には……。

このは「えっ!!」

サミー「あっ!!」

このは「へぶっ!!」

サミー「このは、ごめーん!!」

このは「……何なのよ……今のアヒルは……」

 このははそう言うと気を失った。

魎皇鬼「今の大丈夫だったかな……?」

サミー「たぶん大丈夫……だと思う。このは、結構タフだから……」

 サミーの今の心境は、ひき逃げ犯のそれと同じだった。

 

 

 それからしばらくして、大通りへ出るために十字路を右折しようとした。

 だが、右から自動車が出てきたので、しかたかなくそのまま直進するしかなかった。

魎皇鬼「ちょっとサミー、ここをこのまま行くと行き止まりだよ!!」

サミー「どうしよう!?」

魎皇鬼「どうするって、引き返すしかないよ!!」

サミー「でもどうやって!? スピードを落とさずに引き返すなんて無理だよ!!」

魎皇鬼「うっ……それもそうだね……」

サミー「…………」

魎皇鬼「…………」

 そうこうしてるうちに、行き止まりの壁は40m、30m、20mと近づいてくる。

サミー「りょーちゃん……」

魎皇鬼「な、なに?」

サミー「うまくいくかわからないけど、思いついたことがあるの。しっかりサミーにつか

    まってて」

魎皇鬼「わ、わかった!!」

 サミーはいきなり前輪のブレーキをかけた。

 そうなると、後輪が浮き上がり、逆立ちしたような形になる。

 そこで、腕の力を使って前輪を浮かせ、前宙をした。

サミー「ぬおおおぉぉぉぉぉ!!」

 そして、後輪が壁につき、壁にへばりつく状態になると、おもいきりペダルを漕いだ。

 その勢いで、家の屋根の上まで飛び上がり、そのまま屋根に着地する。

魎皇鬼「すごいよ、サミー!! 屋根の上までジャンプするなんて!!」

サミー「えへへ……。でもこの家が平屋でよかった……」

魎皇鬼「ついでだから、このまま屋根づたいに行って、大通りに出よう!!」

サミー「OK!!」

 ちょうど良いことに、平屋が4軒建っていて、4軒目の向こう側は大通りになっている。

 サミーは次々と屋根の上を飛びのってゆく。

 そして、4軒目の屋根にのった時、ベキッと何か軽い音がした。

サミー「へ? 今の音……わあぁぁぁーーー!!」

魎皇鬼「うわあぁぁぁーーー!!」

 見事に屋根を突き破って、そのまま落下する。

サミー「ぎゃふんっ!!」

 茶の間に落下したらしく、ちゃぶ台を破壊して着地した。

家にいた子供「…………」

 あまりにも突然のことだったので、対応しきれない。

サミー「ご、ごめんなさーい!!」

 止まるわけにもいかないので、あやまりながら家の中を突っ切っていく。

 そして、そのまま大通りへ飛び出した。

サミー「ひょえぇぇぇーーー!!」

魎皇鬼「のわぁぁぁーーー!!」

 飛び出したはいいが、ちょうど通りかかるダンプの目の前だった。

だが、デニス・ホッパーアヒルちゃん号はすごいスピードが出ていてので、ぶつかる

前になんとか通り抜け、そのまま向かいの歩道に入った。

サミー「どしぇぇぇーーー!!」

魎皇鬼「ふなぁぁぁーーー!!」

 今度は歩道で人をひきそうになったが、なんとかかわした。

 そうして、サミーと魎皇鬼は街中に悲鳴を響かせながら大通りを走ってゆく……。

スピードサミー 

4

 サミーと魎皇鬼は大通りから、街の外れにある海岸沿いの道路へやってきていた。

サミー「もういいかげん、足が張ってきたよぉ……」

魎皇鬼「サミー、がんばるんだ!! でないと……」

サミー「ううう……」

鷲羽「なーんか困ってるよーね」

サミー「わ、鷲羽先生!! どーしてこんなところへ!?」

鷲羽「そりゃー、あんだけの騒ぎをおこしゃあ、誰だってわかるわよ」

サミー「そ……そうですか……」

魎皇鬼「ミもフタもないね……」

 ちなみに鷲羽は、自ら開発した小型の空中走行車に乗って、サミーの右上を併走して

 いる。

鷲羽「ところで……私は砂沙美ちゃんの先生であって、サミーの先生じゃないんだけどな

   ぁ」

サミー「そ、それは、その、あの……さ、砂沙美ちゃんにとって先生なら、サミーにとっ

    ても先生になるからですよ……あははははは……」

魎皇鬼「サミー、わけわからないよ……」

鷲羽「ふーん……ま、そういうことにしときましょう」

 鷲羽は、いたずらっぽい笑みをうかべた。

鷲羽「で、サミー、あなた一体なんて物に乗ってるの?」

サミー「これはその、元々は自転車で、ミサの魔法でこんなアヒルになちゃって、でもこ

    のアヒルは爆弾を積んでて、時速15キロ以下になったら爆発しちゃうんです」

鷲羽「ゴチャゴチャしてるけど、とりあえず言いたいことはわかったわ。要するにスピー

   ドのパクリなわけね」

サミー「そうなんです」

鷲羽「でも、その前にサミーの両手を自由にしてあげるわね」

 鷲羽の空中走行車からロボットアームが出てきて、サミーの両手首を拘束している手

 錠をレーザー・カッターで切断した。

鷲羽「じゃあ、次は爆弾の場所ね……」

サミー「あ……あのー……」

鷲羽「なーに?」

サミー「ついでに足も自由にしていただけると、とってもうれしいなぁって思いまして…

    …」

鷲羽「別にしてもいいけど、足を動かしながらでしょ? 間違いなく足ごと切断しちゃう

   わよ」

サミー「や、やっぱり遠慮します」

鷲羽「私もそのほうがいいと思うわ。で、爆弾のことだけど。たぶん、アヒルの頭のとこ

   ろにあるわよ」

サミー「なんでそう思うんですか?」

鷲羽「理由なんてないわ。ただのカンよ」

サミー「えっ?」

魎皇鬼「……いいかげんだなぁ……」

鷲羽「ま、とりあえず、そのアヒルの頭をとってみてちょーだい」

サミー「わかりました。……よいしょっと……あっ!!」

 アヒルの頭を取ると、メーターがむき出しになった。

 そして、メーターの後ろの方には、赤やら青い線でつながっていて、電光掲示板のつ

 いた3本の黒い筒のようなものがあった。

魎皇鬼「これだよ、サミー!!」

サミー「……うん」

鷲羽「やっぱりそこにあったのね……。んじゃ、そういうことでサミー、後はがんばって」

サミー「えっ!? 鷲羽先生が解体してくれんじゃないんですか!?」

鷲羽「なんで私がそこまでそなくちゃいけないのよ。私は、サミーがこのピンチをどうや

   って切り抜けるのか、そのデータが欲しいだけなの。……まあ、さっきはサミーが

   どうしようもない状態だったから少し手助けしてあげたけどね」

サミー「そ、そんなーーー!! 小学生に爆弾解体はつらすぎますー!!」

鷲羽「だったら魔法でなんとかすればいいじゃない」

サミー「りょーちゃん!!」

魎皇鬼「……無理だよ。爆弾の仕組みをサミーが知ってなきゃ解体の魔法は使えないし、

    かといって爆弾だけの時間を止める魔法は今のサミーにとうてい使える代物じゃ

    ないし……」

サミー「うう……。あ……あのー鷲羽先生、本当に爆弾の解体をお願いできないんです

    か?」

鷲羽「う〜ん、そんなに本気で言うんだったら、爆弾を解体してあげてもいいかなぁ……」

サミー「えっ!? 本当ですか!?」

鷲羽「ただし、条件があるわ」

サミー「じょ、条件ですか?」

魎皇鬼「なんとなくわかる気がする……」

鷲羽「そう。今度あなたのことをじっくり調べさせてくれない? 簡単なことでしょう?」

サミー「……どうしよう、りょーちゃん?」

魎皇鬼「どうしようって、しかたないよ……背に腹は替えられないし……」

サミー「……だね。わかりました、鷲羽先生。その条件をのみます」

鷲羽「うんうん、いい子ねサミー。それでこそ私の生徒よ。それじゃあ、明日の昼頃に私

   の家に来なさい」

そう言うと鷲羽は、サミーの前の方へ移動し、ロボットアームを使って爆弾の解体を

始めた。

スピードサミー 

5

 それから数十分が経過した……。

サミー「あのー、鷲羽先生、まだ終わらないんですか?」

鷲羽「ん……? もう少しで終わるから、それまで待ちなさいって。……あとはこのコー

   ドを切れば……」

 パチンッとコードを切ったとたん、騒がしい警告音が鳴り響いた。

サミー「な、何ですか!? このせっぱ詰まった音は!?」

鷲羽「あれ……? 最後は赤いやつじゃなくて、青いやつを切ればよかったのかなぁ……。

   どうも間違ったみたい。あはははは……」

サミー「そ、そんな!! 人の命が関わることを笑ってごまかさないでくださいっ!!」

魎皇鬼「……でも、この人らしいよなぁ……」

 警告音が鳴り止むと、爆弾の電光掲示板に1:00と表示され、デニス・ホッパーア

 ヒルちゃん号は加速し始めた。

鷲羽「ありゃりゃ、こりゃ本格的にやばいわね……。それじゃあサミー、私は安全な所へ

   避難してくるから、後はがんばってねー」

サミー「ちょっと無責任ですよ!! あ、行かないでください、鷲羽先生ぇぇぇ!!」

サミーの叫びもむなしく、鷲羽はあっという間に視界から消えていった。

サミー「そ……そんな……砂沙美はこんな所で死んじゃうの……? まだ恋もしたことな

    いのに……」

魎皇鬼「サミー、早くここから脱出するんだ!! ……ってサミー、サミー!?」

サミー「……そう、それからその人と結婚して、郊外の小さな一戸建てに住むの。子供は

    その人に似た男の子と砂沙美に似た女の子の2人、そして砂沙美はママのような

    美人でやさしいママになるの。それから……」

魎皇鬼「あっ!! サミーが遠い目をして現実逃避の妄想してる!! サミー、そんなこ

    としてる場合じゃないよ、しっかりするんだっ!!」

サミー「……やっぱり冷蔵庫はいっぱい入る440リットルがいいなぁ。しかも色はグレ

    イのやつ。洗濯機はお風呂の水も使えて、時間が短いやつがいいなぁ。そして…

    …」

魎皇鬼「うわー、ディテールにまで凝ってきてるーーー!! サミー、しっかりして!!

    本当にしっかりするんだ!! ……だめか……よし、こうなったら……えい

    っ!!」

 魎皇鬼は、おもいっきりサミーをひっかいた。

サミー「……痛っ!? 何するの、りょーちゃん!?」

魎皇鬼「よかった、正気に戻った。サミー、こうなった以上、ここから脱出するしか助か

    る方法はないよ。それにあと40秒しかないみたいだし……」

 爆弾の電光掲示板は0:40を表示している。

サミー「どげげ、本当だ!! でも、どうやって脱出するの? サミーの足は固定されて

    るんだよ」

魎皇鬼「今は、幸いこれ自体が加速してるから、ペダルを漕がなくていいはずだ。サミー、

    バトンの柄を使ってペダルをたたき壊すんだっ!!」

サミー「わかったよ、りょーちゃん。やってみる」

 サミーは、バトンの柄をガンガンペダルにぶつける。

 それからしばらくして……。

サミー「やったよ、りょーちゃん!! 右足のペダルがはずれた!!」

魎皇鬼「よし、その調子で左足のもはずすんだ!!」

サミー「了解!!」

 0:25

サミー「だめっ!! 左手じゃ思うようにバトンをぶつけられない!!」

魎皇鬼「う〜ん。でも、なんとかして足をはずさないと……」

 0:20

銀次「はーっはっはっはっはっ……」

サミー「……この声は……?」

魎皇鬼「もしかして……?」

サミーと魎皇鬼「パパさん!?」

銀次「はっはっはっ、その通り!! 僕が砂沙美のパパです。ところでサミー、君たちも

   夕日に向かってドライブかい?」

 0:15

サミー「いえ、そういうわけじゃないんです……」

魎皇鬼「このヘンテコな自転車は、あと10秒くらいで爆発するんです!! 危険ですか

    ら早く離れて下さい!!」

銀次「なに、それは大変だ!! 早くこっちへ来るんだっ!!」

魎皇鬼「それではあなたにも危険が……」

銀次「いいから来るんだっ!!」

魎皇鬼「……わかりました」

 0:10

魎皇鬼「サミー、左足のは、はずせそうかい?」

サミー「うん。今、右足でふんばって、左足を引っこ抜くことを思いついたから。……ふ

    ぬぅぅぅぅぅぅっ!!」

 9、8、 7

サミー「ふぬぬぬぬぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

魎皇鬼「サミー、がんばるんだ!!」

 6、5、 4

サミー「ふぬぬぬぬぬぬぅぅぅぅぅぅぅぅ……は、はずれた!!」

魎皇鬼「よし、早くパパさんのバイクに飛び移るんだっ!!」

サミー「ラジャー!!」

 3、2

 サミーと魎皇鬼は無事に銀次のバイクに飛び移った。

 そして、デニス・ホッパーアヒルちゃん号はなおも加速し、ガードレールを突き抜け

 て海へ飛び出し……。

 0、1、爆発!!

 …………………………。

 ……と思ったが、ヒューパンッと軽い破裂音しかしなかった。

 サミーと魎皇鬼は、とりあえずデニス・ホッパーアヒルちゃん号が飛んでいった方を

 見てみた。

 そこには『本当に爆発すると思ったワケ? サミーのぶぁーか』と大空いっぱいに煙

 り文字で書かれていた。

サミー「………………」

魎皇鬼「………………」

 これには絶句するしかない2人であった。

スピードサミー 

6

銀次「はっはっはっ、結局爆弾じゃなくて花火だったのか。いやー、みんな無事でなによ

   りだ。はーっはっはっはっは……」

サミー「すいません、ご迷惑おかけして……」

銀次「なーに、気にしてないよ。こんなに緊張したのは、キューバ沖でのソ連原子力潜水

   艦の占拠・爆破未遂事件の時以来だったしね。あははははは……」

魎皇鬼「あいかわらずこの人は、過去に何をしていたのかナゾだなぁ……」

銀次「おっといけない。もうこんな時間だ。これから愛するホッキュンと砂沙美の待って

   る家へ帰らなければならないから、これで失礼するよ。グッナーイ。」

サミー「グッナーイ。それにありがとうございました。」

銀次「はーっはっはっはっ……」

 銀次は笑い声を響かせらながら、バイクで走り去ってゆく。

魎皇鬼「それにしても今日のミサは何をしたかったんだろうね?」

サミー「さあ? ミサの考えてることなんてわからないよ。ただサミーたちを困らせよう

    としただけじゃないの?」

魎皇鬼「それもそうだね」

サミー「ところでりょーちゃん、ずいぶん街のはずれに来ちゃったよ。どうやって帰ろう

    か?」

魎皇鬼「どうやってって、歩いて帰るしか……そうだサミー、どうせならこのまま走って

    帰ろう。そうすれば魔法の特訓にもなるし」

サミー「えー!! 走るのぉー!!」

魎皇鬼「だってそれしか方法がないじゃないか」

サミー「でも、タクシーとかがあるじゃない?」

魎皇鬼「お金持ってるの?」

サミー「……持ってない……」

魎皇鬼「よーし決定。それじゃあ走ろう」

サミー「うう……なんか今日のサミーって、踏んだり蹴ったりだよ……」

魎皇鬼「ほーら、文句を言わずに走る、走る」

サミー「りょーちゃんの鬼ぃぃぃぃぃ!!」

 サミーは夕日をバックに走りだした。

 

おわり